関節運動の基準
”なぜ目を向けられていない?結合組織”でご紹介したように、
結合組織が動きを制限するという考え方は医療業界に於いても非常に薄い認識です。
関節硬縮(固定などによって起こる関節運動の制限)に対しても
ほとんどは無理矢理マクロレベルでの運動を強制するに留まります。
この現状があるのも、人体の関節運動の基準を解剖から得られた情報を基に定めているからなのです。
本来の関節運動
一般的に骨格は骨と骨とが連結して動いているものであると考えられています。
そしてその範囲で動けていれば正常であると判断されます。
しかし、ここにも落とし穴がありました・・・
そもそも骨格の動きに対しての認識が間違っていたのです。
骨同士は外力に抗する場合には接触しますが、
常に接触しているようでは本来の可動性が確保できないのです。
本来骨同士の動きはヌンチャクのように、
周辺の結合組織が許す限り自由に動くものです。
解剖学の基礎として習う「運動軸」というのは限定してはならない運動の傾向だったのです。
しかし既に結合組織の柔軟性が損なわれたご遺体では、それを確認することはできません。
生きている状態の関節運動は非常にフレキシブルなのに、
医学の関節運動の認識は非常に限定されたものです。
解剖ありきで発展してきた西洋医学が内包する負の部分を感じます・・・
そして世界の医療は、その謎(矛盾)を解決できないまま今日に至っています。
”動きの制限”が起こってくる原因
”動きの制限”それ即ち”結合組織の硬さ”なのですが、
人体の不具合の全てが関わると言っても過言ではありません。
ヒトの体は常日頃から、
”なるべく低燃費に”
対応するように出来ています。
本来なら自由度の高い各関節なんですが、
言い換えれば”燃費”の悪い状態です。
体は重力や自分の筋肉が発生させる力に対して、
体勢の維持や関節の保持のために筋肉を使います。
この時にかかるエネルギーは、
各関節の自由度が高ければ高い程、より多く必要になります。
もし日頃あまり動かさない関節、
もしくはそこまで動かさないアングルが有るんだとすれば、
それを出来なくしてしまうことでエネルギー消費を抑えることが出来ます。
これが関節の”動かさないことにより起こる制限”です。
あと一つ”大きな外力に抗するために起こる制限”もあります。
結合組織は外力のかかりやすい部分に繊維が多く配置されています。
そして繊維が多く配置されているということは、
”密度が高く体液の循環を維持しにくい”
即ち”硬くなりやすい状態”と言うことです。
日頃から体に大きな外力がかかる場合、
関節の運動性を理想的な状態で維持し続けるのは不可能でしょう。
今日のスポーツ選手が短命なのはここに原因があります。
このようにヒトの結合組織は日々着々と動かなくなっていっています。
更にはそれこそがいわゆる「老化」であると考えます。
具体的な”動きの制限”
上記の内容を踏まえて考えると、
自由度が高い、もしくは、大きな外力がかかる関節ほど
動きの制限が起こりやすいのが分かります。
つまりは日常の一般的な体の使い方であれば、
頭部、脊柱(胸郭含む)、肩、骨盤、股関節などに制限が出やすいと言えます。
そしてこれら結合組織の割合が多い部分から、
上肢や下肢へ制限が波及することがほとんどです。
肘や手や手首、膝、足首、足などは上部からの制限も受けているので、
不具合が出ている部分をいくらいじったところで解決には至らないということです。