「西洋医学」と「東洋医学」

ヒトの体に対しての考え方や理論というのは数多く存在します。
それらを大分すると概ね「西洋医学」「東洋医学」に分けられます。

多少語弊があるかもしれませんが、

「西洋医学」はヒトの体を解剖して、その構造から理論を構築し発展したもの。
「東洋医学」は症状に対して様々なことをやってみて、その結果から理論立てたもの。

という見方ができます。

今日の医療が「西洋医学」ベースで行われているのは、
「東洋医学」に比べて短い歴史で大きな成果を上げているからかもしれません。

一方「東洋医学」は長い歴史によって積み重ねられた膨大な経験値によって
「西洋医学」では未知の部分でも成果を上げたりしています。

今のところこの根本の違う二つを繋ぐ理論は存在しません。
「西洋医学」のスタンスで「東洋医学」の説明が付けられたときに、
ようやくこのテーマは幕を閉じることでしょう。

そしてこの二つを繋ぐ重要な要素が結合組織の存在だと言っても過言ではありません。

「西洋医学」の根本

「西洋医学」の根幹とも言える情報は、解剖学と生理学です。
これらは、ヒトの体がどのように造られていて、どのように働くのかといったものです。

人間の都合でこのように「○○学」と分けられていますが、
元はヒトの体な訳で、飽く迄便宜上といったところです。

そしてこの最も重要な情報をもたらすのが人体解剖です。

人体解剖の限界

「西洋医学」のコアになる情報をもたらしてくれる人体解剖は、
生きているヒトを意識がある状態で解剖する訳にはいきません。

当然、亡くなった方のご遺体を解剖するのですが、
ここに大きな問題がありました。

生きているときと亡くなっているときで、
まるっきり状態が変わってしまう組織があったのです。

それが結合組織です。

”生きているとき”と”亡くなっているとき”

まず”結合組織とは”でも少し触れましたが、
体液の循環が損なわれることで、
繊維同士の動きが無くなり密集し、組織として硬くなります。

あと体液循環も大きく影響しますが、温度による結合組織の状態変化です。

ヒトは一定の体温を維持しています。
その体温を全身に行き渡らせるのは血液や体液の役目になります。

しかし生体活動が停止すると、
体液の動きと体液が運ぶ体温の供給が共にストップすることになります。

結果として結合組織は硬くなり、生きているときの状態が想像しにくくなるのです。

この内容から、明らかに死後硬直は結合組織の性質から起こるものだと考えられるのですが、
未だに世間では「筋肉の作用によるもの」と考えられています。
それだけ結合組織は目を向けられていないという証拠です。

生活の中での結合組織

ヒトを含め、動物の結合組織はコラーゲンなどのタンパク質で出来ています。
これらの特徴は上記で述べたとおり温度により状態が変わることです。

例えばゼラチン。

一般に食用のゼラチンとして出回っているのは、
豚の皮から取ったタンパク質です。

粉の状態で売られていたりしますが、
お湯に溶かすと温かいときは液体で、冷めると固まります。
食べ物では”煮こごり”なんかも同じ理屈です。

あと最近ではあまり使われることが無くなった、膠(にかわ)なんかもそうです。
膠は動物の結合組織から煮出した液体(煮出すので最初は液体)ですが、
昔は接着剤などに利用されていました。
当然湿気と高温に弱く、今は化学合成された接着剤が主流です。

書道で使う墨(カチカチの擦って使うもの)も膠で固められています。
炭素の塊ってこともありますが膠を見たことが無い方は、
あれを想像してもらうと結合組織の硬化具合がイメージしやすいかもしれません。

そして各個人が体感できるものの中には
冬場に手がかじかむ感覚や、ウォーミングアップをして体が動きやすくなる感覚などがあります。

このように実生活の中に結合組織の特性を示す情報がたくさん有るにも関わらず、
そもそもの人体の捉え方が違ってしまったばかりに、
今日の生活習慣病や日常の不具合が蔓延したり、
スポーツ選手が短命で終わる世の中が形成されているのです。

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